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粒界拡散合金法

信越化学の新技術である粒界拡散合金法は、Dyを粒界近傍に集中配置させることで、従来の二合金法に比べ保磁力の更なる向上、飽和磁化低下の低減を実現しました。

ここでは、この新技術の解説をします。

Nd-Fe-B磁石の磁化曲線と磁壁移動の関係から、保磁力機構に注目します。

図をクリックすると、拡大図が表示されます。

粒界拡散合金法

このように、Nd-Fe-B焼結磁石の保磁力は逆磁区の核生成磁場により決定されます。結晶磁気異方性を増大させ逆磁区の生成を抑制することで、より大きな保磁力が得られます。

結晶内のNdを結晶磁気異方性が大きくなるDyやTbといった重希土類で置換することで保磁力を増大させることができます。しかし、右図のように置換量が増えると保磁力は増大する一方で、残留磁束密度が低下してしまいます 。

粒界拡散合金法

そこで、従来の二合金法では、重希土類を含まない化学量論組成に近い組成の母合金と、重希土類を添加した焼結助剤合金という融点の異なる二つの合金を混合し焼結することで、結晶磁気異方性を増大させるDy等の重希土類を粒界近傍に選択的に配置させました。これにより残留磁束密度の低下を抑えながら保磁力を増大させ、重希土類元素の効果的な利用を実現しています。

粒界拡散合金法

粒界拡散合金法

そしてさらに、信越化学が開発した粒界拡散合金法では、Dy等の重希土類を従来の二合金法よりもさらに粒界近傍に集中配置することで、効率的に保磁力を増大させるとともに、残留磁束密度低下の抑制を実現しました。

従来の二合金法では高温の熱処理である焼結工程の段階でDyを拡散させるため、必要量よりも多くのDyが粒界近傍に拡散する現象が見られました。そこで粒界拡散合金法では、焼結後に希土類化合物を塗布した後、焼結温度よりも低い温度で熱処理(拡散処理)することでDyの拡散を必要な量に制御し、効率的なDyの利用が可能になりました。

イメージ図

粒界拡散合金法

実際の金属組織写真での比較

粒界拡散合金法

また、磁気特性では下記の減磁曲線からわかるように粒界拡散合金法は従来二合金法と比較して、磁化が低下することなく約30%の保磁力増大を実現しています。

粒界拡散合金法

当社は、粒界拡散合金法で、さらなる高特性グレードの実現を可能にします。

粒界拡散合金法
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