磁気回路解析 / SPMモータ解析
永久磁石は磁気特性を高めるために,磁場中成形で容易磁化方向を揃え異方性磁石とします。通常は平行磁界中で平行配向したものとなっていますが、金型を設計することで配向を制御することが可能であり、要求に応じた配向するを提供できます。
例えば、モータに使用されるC型磁石としてラジアル配向の磁石を製造する場合をみてみます。図(a)の配向プロセスにおいて、配向磁場がラジアル磁場になるように金型の形状を設計します。ここでは数理計画法を利用し、最適形状を求めました。図(b)は金型設計後の配向磁場分布です。磁石粉が充填されるキャビティ部分でラジアル方向の磁場を実現しています。図(c)はこのようにして製作したC型ラジアル磁石と通常の平行配向磁石の表面磁場分布です。ラジアル配向の方がより角張った分布になっています。
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- 参考文献
- Norio Takahashi, Kenji Ebihara, Koji Yoshida and Takayoshi NakataKen Ohashi and Koji Miyata, “Investigation of Simulated Annealing Method and Its Application toOptimal Design of Die Mold for Orientation of Magnetic Powder", IEEE Trans. Mag., Vol.32,No.3, (1996), pp.1210-1213
永久磁石の動作点が、温度変化や反磁界によってクニック点以下になると不可逆減磁が始まります。磁場解析によって動作点での磁化カーブを把握することで、減磁のシミュレーションが可能です。
例えば、図(a)に示す6極18スロットモータにおいて、定格とその3倍で正弦波電流駆動したとします。磁石はN42SHです。図(b)は温度と、室温に戻した時のトルクの変化量(熱減磁)の関係です。定格電流では180℃でもほとんどトルクの変化はありませんが、3倍定格では11%のトルク減少が見られます。図(c)は磁石の中の減磁量をコンタ図で表したものです。固定子からの反磁界が大きな部分で減磁が見られます。熱減磁によってGapの磁束密度分布に歪が生じ、図(d)のようにコギングトルクが増大します。
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SPMモータにおいて、コギングトルクの低減は重要な検討テーマです。コギングトルクは磁石の形状の影響を大きく受けます。ここでは、4極24スロットモータで、内外径が同心の磁石を用いたものを初期形状(図(a))として、磁石外形を偏芯にした場合(図(c))と磁石外形をコギングトルクが最小となる形状にした設計(図(d))を行いました。
図(b)にコギングトルク波形を示します。偏芯C型磁石では、コギングトルク初期形状の7.5%になりました。さらに、表面形状を最適化すると0.5%まで低減できました。形状設計には数理計画法を利用し、最適解を求めました。磁石の形状によって、コギングトルクを低減できることが明らかになりました。
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- 参考文献
- K. Kakuno and K. Ohashi, “Optimum Design of Magnetic Circuits using a Rosenblock Method",16th International Workshop on Rare-Earth Magnets and their Applications, pp1075-1082 (2000)
コギングトルクの低減にはステータまたはロータのスキューが有効です。
ここでは図(a)に示す6極9スロットモータで、磁石を軸方向に3分割し、ステップスキューを行った場合のスキュー角とコギングトルクの関係を磁場解析によって求めました。
図(b)にスキュー角とコギングトルクの関係を示します。コギングトルクが最小となるのはスキュー角が40°、20°の場合です。それぞれスロット角とその半分に相当します。スキュー角を大きくすると図(c)のように誘起電圧が小さくなってしまうので、通常、スキュー角は1/2スロット角に選ばれます。磁石ステップスキューによる、コギングトルク低減を明らかにしました。
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磁石の極数とスロット数の関係は、コギングトルクに大きな影響を与えます。ここでは、図(a)に示す6極9スロットモータと8極9スロットモータを比較しました。
コギングトルク波形を図(b)に示します。 8極9スロットモータでコギングトルクが小さくなっています。一般に磁極数とスロット数の最小公倍数が大きいほど、コギングトルクは小さくなります。6p9sの最小公倍数は18で、 8p9sは72です。
通常の集中巻きのモータの磁極数とスロット数は2:3に設定されますが、巻き線を工夫することにより、9スロットでも8極のモータにできます。この他、磁極数とスロット数の関係が2:3でないものには、10p-9s、 10p-12s、 14p-12sなどがあります。
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永久磁石の配向と駆動電流波形の組合せにより、トルクリップルの大きさが変化します。 ここでは図(a)に示す磁石の配向が平行とラジアルの2通りのモータで、電流波形を正弦波と矩形波で駆動した場合のトルク波形をシミュレーションしました。
モータの誘起電圧波形は図(b)のように、平行配向が正弦波であるのに対し、ラジアル配向は台形波になります。このモータを図(c)の正弦波と120°矩形波で駆動した場合のトルク波形は図(d)のようになります。正弦波電流駆動の場合は、平行配向の方がトルクリップルが小さく、矩形波電流駆動の場合はラジアル配向の方が小さくなります。特に、平行配向で、正弦波電流駆動の組合せでトルクリップルが小さくなっています。
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